事例6
F美術館様
平成27年〜
新館の開館前に清浄度を把握したい!
というご相談。
経緯
F美術館様から、新館立ち上げにあたって環境調査(トラップ調査・空中浮遊菌調査)についてご相談を受けました。作品・資料を搬入する前の清浄度を把握しておくことが目的でした。
弊社が関わった某国立博物館の事例では、開館直前は工事による粉塵で収蔵庫も展示室も適切な保存環境ではなかったため、事前のIPMメンテナンスをご提案しました。環境調査は他社が受注しましたが、IPMメンテナンスは弊社が受注。
館様は都会の商業ビル内にある美術館であるため、虫菌害が発生した場合に燻蒸処理することが難しい(不可能)ことを認識されていて、生物被害を未然に防ぐための何らかの処置が必要であるというお考えをお持ちだったことも受注につながった要因です。
対策
事前に実施したトラップ調査の結果から、文化財害虫の捕獲はないという情報がありました。
そこで、現在の粉塵の状況等を目視点検し堆積しやすい箇所や、除塵の仕方などを検討・確認しつつ、直ちにIPMメンテナンスの各種処理を実施することになりました。展示室・収蔵庫全域にわたる処理であったため、作業員全員が同じ認識で作業にあたり情報を集約しました。
※明治クリックスは全員が文化財虫菌害防除作業主任者の有資格者であり、半数は文化財IPMコーディネータです。
IPMメンテナンスの内容
除塵・清拭処理
- [1]収蔵庫内
- 静電気モップで蛍光灯周り及び棚のスノコの粉塵を除去し、巾木の上の粉塵は、壁を傷めないように刷毛等を使いながらHEPAフィルター付き掃除機で除塵後、脱水ウエスを使い清拭処理。
- 壁面壁際に積もった調湿ボードの粉末、少量の鉄粉を確認したため、HEPAフィルター付き掃除機で除塵。
- 手すり部分は脱水ウエスで清拭処理。
- 床面をHEPAフィルター付き掃除機で除塵後、脱水ウエスを使い清拭処理。
- [2]展示室内(庭園風の造作物を含む)
- 稼働壁、展示ケース内等をHEPAフィルター付き掃除機で除塵後、脱水ウエスを使い清拭処理。
- マイクロクロスでガラスの清拭処理。
- 展示台は毛羽立ちを防ぐために粘着ローラーで除塵。
- 空調吸い込み口周辺を脱水ウエスで清拭処理。
- 床面をHEPAフィルター付き掃除機で除塵。
- [3]展示室(庭園を模した造作物がある)
- 造作物を静電気モップ・HEPAフィルター付き掃除機で除塵後、脱水ウエスで清拭処理。
- 庭園風の造作、植栽はホコリを静電気モップで除去した後に、清拭処理。
- 展示室の空調吸い込み口周辺にホコリの汚れを確認。HEPAフィルター付き掃除機で除塵した後、清拭処理。
ご提案
- [1]収蔵庫
- 特に巾木の上は今後も粉塵が溜まる可能性があり、壁面を傷めないように刷毛等で払いながら掃除機で吸引して除去する等の手入れをすること。
- [2]展示室内(庭園風の造作物を含む)
- 一部植栽はホコリがつきやすく、静電気モップで掃うだけでは取れず、清拭処理が必要。開館後の人の出入りの増加によってホコリの付着量は増えていく可能性があるので植栽に関しては少なくとも年に1回はメンテナンスを実施すること。
- 空調吸込口は開館すると今以上のホコリが吸込み口周辺に溜まり、ムシの温床になる可能性があるので日々メンテナンスを実施すること。
評価
可能な部分は一般清掃に組み込む方針で、日々メンテナンスしておくべき箇所を把握することができたと評価をいただきました。
それで対応できない部分は予算と相談しながら今後もIPMメンテナンスをしていきたいとのことです。