カビ被害がカビ被害が急増している

施設全体を一律にして同じ対策を講じても、効果的でないばかりかムダにもなります。まずは3つのゾーンに分け、必要な処置・改善点を調査していきます。

ゾーニングイメージ
最も警戒するべきゾーン
  • 一般収蔵庫
  • 特別収蔵庫
  • 収蔵庫前室
  • 展示ケースなど
警戒が必要なゾーン
  • 通路(展示室のケース以外の部分を含む)
  • 撮影室
  • 空調機械室など
外部と接するゾーン
  • 玄関ホール/出入口
  • 資料搬入口
  • 荷解梱包室
  • 風除室など

文化財IPMはPDCAルを回しながら進めます。

文化財IPMは「PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)」に沿って進めていくのが理想的で、そのサイクルを回していくことでより効果的な文化財保存に到達していきます。

現状分析のため館内の状況を調査し、建物・設備状況はチェックシートで確認します。

また扉の開閉や新規収蔵品受け入れルールなど運用状況に問題はないかなど総合的な判断で、環境改善や害虫処理の計画を作成します。

文化財IPMは1年で完了するものではなく、3カ年中期・単年度・月次計画へと落としこんでいきます。

チェックシート例
ゾーン 場所 項目 判定 備考
収蔵庫 前室がある ◎ 展示台が大小8つ、作業台の大が1台ある。
扉に隙間はない ◯ ゴムに劣化とズレあり。
中央に僅かに光がもれる。
入室はスリッパに
履き替えている
◎ 月1回 消毒用エタノールできれいにしている。
スリッパのラックがある。
粘着シートがある ◯ 担当が粘着が弱いと気付いた時にめくっている。
ルールは特に無い。
網戸がある △ 30メッシュである。
モヘヤが劣化し建具に約8mmの隙間がある。
照明は紫外線
対策済みである
◎ 博物館専用蛍光管を使用中
照明は落下防止
対策済みである
◎ 落下防止の金具がある
壁や床は
調湿機能がある
◎ 壁は無機質の調湿ボード、
床はブナ材である。
ドライエリアがある ◎ ドライエリアのコンクリート壁側に
発泡断熱材が吹き付けてある。
点検やメンテナンスが出来るスペースがある。
24時間空調である ◎

IPMメンテナンスを実行します。

日常の各点検や調査は役割分担を決めて実施します。

徹底的な清掃を基本に、害虫・菌の処理、施設の環境改善を実施していきます。

環境改善は、空調設備、LED照明の採用、ドアブラシの設置など物理的防除対策が主になります。

実施した対策がどれだけの効果を上げているかの評価です。

結果の報告は1カ月毎と1年間の総合評価があります。

報告に基づき中期計画・各仕様の「変更」の有無を確認します。

仕様内容の「変更」は必ずしも毎年必要ありませんが、「チェック」は毎年必要です。

次年度予算でできる対策の確認、運用ルールの改善、仕様の変更が必要となった場合は新しい仕様書の作成などを行います。

環境改善などの効果が現れると燻蒸の回数を減らすことも可能になってくると思われます。

文化財IPMの全体像とは

文化財IPMの工程のなかでも、とくに重要な位置付けとなるのがIPMメンテナンスです。 明治クリックスでは、すべての工程を資格を持った技術者が行います。

最初に実施するのは、どのような対策が必要かを検討するための点検・調査です。点検はLEDライトを使用しながら目視で行い、結果を記録します。埃、虫損・死骸、カビ被害、あるいは水漏れ・結露跡などを調べます。

処理には乾式処理と湿式処理があります。

ヘパフィルター付き掃除機による埃の吸引除去、もしくは静電気モップ

脱水ウエスによる残った埃の清拭除去

IPMメンテナンスは「丁寧な清掃」ではありません。資料保存のための処理です。

被害の原因となるムシやカビの種類の特定、生息量の推定、活動状況などを調査するための重要な工程でもあります。専門の知識、技術、そして豊富な経験を必要とします。