[社長コラム]Y'sMessageY's Message

新しいテキスト              カビ対策パーフェクトセミナー

meijiclix
10月 3rd, 2023

図書・資料の保存、特にカビ対策を目的としたテキストが完成いたしました。

カビを防ぐ対策に重点を置きながらも、万一被害にあった時の適切な処理にも開設しています。是非、お買い求めください。 なお、ご要望に応じて「カビ対策セミナー」を開催しています。有償と無償のセミナーの2つがありますが、両方ともこのテキストで講義を行います。※無償のセミナーの場合でもこのテキストだけはお買い求め頂くことになります。

テキストの内容は次の通りです。                        ●カビが発生する原因と対策(湿度管理に思いがけない落とし穴があります)                               ●カビの発見方法(日常の点検・早期発見の3つのコツ)          ●専門業者に任せる?自分たちで出来る?(相談のタイミングが分かります)                                 ●カビ処理の準備(自分たちで行う場合の装備から道具まで解説)                ●クリーニングの方法(乾式と湿式)                   ●図書館・書庫のIPMメンテナンス(清浄度アップで絶大な防カビ効果)

                                                                            図書館員、必見! カビ対策パーフェクトセミナー                           蔵書をカビから守るために。                                            日常の湿度管理をはじめ、点検、クリーニング手順までを完全解説。                           頒布価格1,100円(税込)※送料は実費を頂戴しております。                        お買い求めはFAXかお電話、メールにてお問い合わせください。ご注文書をお送りいたします。誠にお手数ですが注文書に必要な事項をご記入の上、メールかFAXにてご送付ください。担当は吉川です。                                                                   尚、今後ホームページ上に直接ご注文頂けるように注文書をアップいたします。よろしくお願いいたします。

メールアドレス world@meijiclix.co.jp                                   ※ホームページ上の「お問合せ」メールアドレスと同じです。

FAX 06-6423-3452

TEL 06-6423-0662

「処理の為の同定」と「保存の為の同定」は違う(2)

meijiclix
3月 7th, 2023

長らく更新しておらず申し訳ありません。引き続きカビの同定のお話しです。前回は「保存の為の同定」では種まで調べます、カビにも個性があるのです、とお伝えしました。ところで収蔵庫内や書庫内で発生するカビは一般的な培地(PDA培地)では培養が難しいことは御存じでしょうか? 

[PDA培地では文化財のカビは出てこない?]

収蔵庫内の文化財や壁や床、書庫内の図書・資料、床等に発生したカビは一般的な培地(PDA培地)ではほとんど出ません。やはりカビには個性があり、調べるには適切な培地を選択しなくてはならないのです。私共ではPDA培地だけでなくM40Y培地も使用しています。

●PDA培地

培地は ジャガイモ+ブドウ糖+寒天で作られます。

一般的な培地で収蔵庫・書庫内の空気清浄度や浮遊しているカビを調べる時に使用します。しかしこの培地には収蔵庫や書庫内で発生する好乾性のカビはほとんど出てきません。その為、必ずM40Yも併用します。

●M40Y培地

培地は ショ糖+麦芽エキス+酵母エキス+寒天で作られます。

収蔵庫内、書庫内で発生する好乾性のカビを調べる時に適しています。尚、M40Y培地に出る好乾性カビは種まで同定します。種まで調べることで発生した環境を知ることができ、何よりも再発防止に役立ちます。

[採取の手順]

実際に収蔵庫内や書庫内でカビ被害が発生した場合には以下の手順を踏んでいます。

  • ヒヤリング

カビの発生時の状況、資料の利用状況、クリーニングの履歴、建物・空調、地形・気象等もお尋ねします。

  • 目視点検

LEDライトでカビの発生か所・コロニーの形状や密集度等々の発生状況、ホコリの量や種類、チャタテ等のムシの糞や死骸等を調べます。壁や床、棚に被害が無いかも確認します。また温湿度データがあれば提供して頂き温湿度の変化を確認します。

  • 採取

発生しているカビを特定するためにPDA培地とM40Y培地の2種類を準備します。

先ず発生しているカビを採取用シールや綿棒で採取(=付着菌採取)しPDA培地とM40Y培地の2種類で培養します。また空間中に浮遊しているカビとその量を測るため、同様に2種類の培地を使用しエアーサンプラーでカビを採取(=空中浮遊菌採取)します。何れも5日から7日間程度培養し同定します。

[処理の前後]

IPMメンテナンスやカビ処理の時にも同様に2種類の培地を使用し、資料に付着しているカビ、並びに空中を浮遊しているカビをPDA培地とM40Y培地の2種類の培地を使用して調べることをお勧めします。

くどいようですが、「収蔵庫内・書庫内で発生したカビを調べる時はM40Y培地でも培養が必要です。」 更にカビの採取だけでは正確なカビ調査とは言えません。①②のヒヤリングや目視点検は文化財のカビの専門家がさせて頂く点がとても大切です。①②なしでは的確な再発防止策や処理のご提案も望めないことを意味します。

カビ除去時の防護と道具たち

meijiclix
9月 6th, 2022

少し間が開いてしまいました。今日から防護編をお伝えします。

[防護編]

防護で最も先ず大切なのはカビを吸い込まないためにマスクを着用することです。水損の場合を除いて文化財に発生するカビには、いわゆるカビ毒は概ねありません。しかしアレルゲンではありますし「如何にカビを吸い込まないようにするか」はやはり重要です。ではどのようなマスクを選定すべきか? 結論はやはりDS2やN95レベルのマスクがお勧めです。幸いなことに「カビ処理時にはN95かDS2を着用する」ことは広く知られるようになりました。N95はコロナの関係で未だに手に入りにくい状況ですが、DS2は以前と同じように流通していますので入手は容易です。

[一般的なサージカルマスク]

一般のサージカルマスクとN95、DS2との一番の違いは使用目的です。その為にフィルターの性能と密閉度も違います。ご承知のようにサージカルマスクは「吸い込まないためよりも、飛沫を飛ばさない」ようにするのが目的のマスクです。良く広告で見られる「PM2.5(=2.5μ)を99%カット!」はあくまでもフィルター性能を謳っています。フィルター性能だけ見ればカビの胞子は3μ程度ですので十分防げていますが、耳掛けタイプですからマスクと顔の間には隙間が生じています。使用時は必ず鼻にフィットするようにワイヤーを調整し、マスクのジャバラを開いて顎全体を覆うようにします。顔の半分がマスクで覆われるようなイメージで兎に角すき間を無くすようにします。

[N95とDS2]

N95とDS2は同じレベルです。0.3μ程度までの粒子を「吸い込まないの」が目的のマスクです。着用においてはマスクと顔にすき間が生じないようにマスクの紐を後頭部に回してマスクと顔を密着させます。また必ず鼻にフィットするようにワイヤーを調整します。初めて装着した時は息苦しくて外したくなるほどですが 5分から10分程度装着していると慣れてきます。N95は米国の労働安全衛生研究所(NIOSH)の規格でDS2は厚生労働省の規格で使用目的も性能も同じです。

また商品の中にはKN95と言う規格がありますがこれは耳掛け式でサージカルマスクと同じようにすき間ができます。従って本格的なカビ処理の現場では推奨できません。

3.更によく頂く質問です。                         Q:図書の天にのみ、わずかにコロニーが確認できる程度の被害の図書を1,2冊  処理するのにもわざわざDS2、N95レベルのマスクを着用しなくてはいけませんか?

A:出来るだけDS2、N95をお勧めします。ただ、軽度被害で1,2冊程度なら吸い込まないように注意して処理を行えば大丈夫かと思います。吸い込まないようにするには、                               ●へパフィルター相当の掃除機を使ってカビを吸引除去する           ●刷毛で払う先に空気清浄機を置く。あるいは屋外で風向きに注意しながら除去する                                          と言ったことです。

繰り返しますが、まとまった処理をする時、あるいは重度な被害の時はDS2、N95マスクが必須です。

次回はグローブです。これも意外とお問合せ頂きます。

カビの点検(2)

meijiclix
8月 4th, 2022

カビの点検(2)

[再発したカビの出かた(見え方)]

 一旦クリーニングしてもカビの活性が高くまた湿度が高いと比較的速やかに再発します。本来、紙に発生するカビは長い時間を掛けて発生するのですが、クリーニング処理後に違う種のカビが新たに出る場合や、処理そのものが不十分であった場合は比較的速やかに再発します。早い場合は1週間から2週間で目に見えるようになります。

 初発のカビのコロニーは「大きさもまばらで散在」していますが、再発の場合は「ほぼ均一の大きさでしかも密集」していることが多いようです。またカビの発生個所は初発では「天→背→表紙・見開き・小口・・・の順番」ですが、再発時には「表紙や背が比較的早いようですが順番は特にありません」。また数ケ月後に一気に発生・拡大した場合はダニやチャタテムシなどのムシによる影響も考えられます。

[再発時に注意して点検する箇所]

 再発時は「天」だけでなく「背の文字部分」や「天のチリ部分」、「小口」や「地」を注意して点検します。これらの個所は再発でも密集箇所が狭く短いケースがあるからです。背文字は印刷や刻印の関係でほんのわずかですが窪んだり膨らんだりしています。このわずかな凹凸にホコリが付着しやすくカビも発生しやすくなります。処理はこの凹凸を意識しながら行う行うことも大切です。

 点検に慣れてくるとLEDライトが無くても背文字周辺の見え方に違和感を感じカビ被害に気付くようになります。またご自分でクリーニングを経験されると背文字付近の凹凸やカビの出かたが他の場所とは違う事を実感できます。

[カビの種を特定する]

 初発の時と同様再発の場合もカビを調べ、同じ種の再発か違う種によるものなのかを必ず調べます。

[まとめ]

①カビの初発と再発での「出かた(見え方)」の違い             ●初発:コロニーは大きさもまばらで散在                     〇再発:コロニーはほぼ均一の大きさで密集

②カビの初発と再発で「生える順番」の違い                ●初発:天→背→表紙・見開き・小口・・・の順                  〇再発:特に順番に決まりはありません。若干、背・表紙が速い印象はあります   

③カビの再発時に注意する箇所                        ●再発:「背の文字部分」や「天のチリ部分」、「小口」や「地」

④ムシの影響が考えられる場合の調査方法。床がカーペットの場合は要注意。                                 ●ダニの場合                                  床面を集塵して試験紙の色の変化を見ることで凡その傾向が分かります。「ダニ検査用マイティチェッカー」として知られています。                                  ●チャタテムシの場合                                      再発した図書の周辺に糞の痕跡が無いか点検します。                               もしくはモニタリングトラップ(多くはゴキブリホイホイの形をしています)を3日から7日ほど配置して捕獲状況を調べます。

文化財のカビの湿度と温度

meijiclix
8月 2nd, 2022

 再発したカビの点検の仕方をお伝えする前に、カビそのものに少し触れておきたいと思います。今回は日常の収蔵庫や書庫等において被害をもたらすカビについてお伝えします。

収蔵庫や書庫内の空気は必ずしも均一ではなく、四隅や床付近また集密書架では空気が滞留して温度差・湿度差が発生しています。

カビの発育を防ぐには「湿度は60%以下」に設定しますが、温度でカビの生育をコントロールするのは実質的に困難です。

[被害をもたらす代表的なカビの生育湿度]

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湿度による分類生育(相対)湿度 文化財に発生する    代表的なカビ
好乾性カビ65%(70%)から90%アスペルギルス・レストリクタス、 アスペルギルス・ペニシリオイデス 、ユーロチウム・アムステロダミ ユーロチウム・チェバリエリ ワレミア・セビ
耐乾性カビ80%(85%)以上アスペルギルス・バージカラー
好湿性カビ97%以上

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 上記のようにカビを生育湿度で分類すると3つにわけることができます。文化財に発生する多くのカビは好乾性カビの仲間です。このため収蔵庫などの空間には空気の滞留(温湿度差)があることを前提に「湿度の上限は60%以下」を目標に設定します。尚、エアコンの「除湿」設定は人間にとって快適である為の機能であり、必ずしも湿度を60%以下にしてくれる訳ではありません。

 また経験上被害が多いカビはアスペルギルス・レストリクタス、アスペルギルス・ペニシリオイデス等で次にユーロチウム属、ワレミア等その他のカビと続きます。

[被害をもたらす代表的なカビの生育温度]

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発育温度カビ
約6℃から37℃アスペルギルス・レストリクタス
約5℃から37℃ユーロチウム・チェバリエリ

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 例えば夏季、エアコンで書庫内を19℃から20℃程度に設定してもカビは十分に生育します。むしろ約20℃は至適に近い温度です。「20℃(25℃)から30℃がカビの至適温度」と言われますが、これは至適温度であって20℃を下回ってもスピードは落ちますが生育しています。むしろカビは低温に強く浴室のパッキンに出て厄介なクロカビ(クラドスポリウム)は約3℃でも非常にゆっくりとですが生育しています。上記のように好乾性のカビの仲間も比較的低い温度で生育できます。従ってその空間において人間が作業したり、出入時の温度差による結露発生を考えるとカビ予防の為に温度を極端に下げることは現実的ではありません。

つまり温度でカビの発育を防ぐのは実質的に困難なのです。

 

参考図書: カビ検査マニュアルカラー図譜 株式会社テクノシステム発行

カビの点検

meijiclix
8月 1st, 2022

[LEDライトの使用]

文化財にカビや虫損が無いかを点検する時にはLEDライトを必ず使用します。収蔵庫や書庫の照明だけでは十分とは言えません。メンテナンス用の照明がある収蔵庫でも点検の際はLEDライトの使用をお勧めいたします。   

[ホコリのリスク]                              カビの胞子は栄養となるホコリと一緒に浮遊しており基質(文化財の場合は主に木や紙)に付着し条件が整えば繁殖を始めます。従ってホコリが多いとカビのリスクも高まりますので点検の際はホコリの多く積もっていそうな箇所を先ず観察します。ご承知のように最下段の棚はホコリが多く湿度も高めです。また北側は冬場に湿度が上がりやすいので棚と壁の位置関係にも注意が必要です。さらに空調の給気口に棚が近いと夏場では冷気が直接当たり、排気口付近の棚ではホコリが多くなります。特に集密書架では空気が滞留しやすいので注意が必要です。カビに限らずホコリと生物被害は密接な関係にありますので注意が必要です。

[カビの見え方]                             さてLEDライトでカビを観るとコロニーがくっきり見えます。コロニーに陰が出来るように真横から光を当てると良く観察できます。初めてLEDライトでカビのコロニーを見ると皆さん驚かれます。「えー! こんな風に見えるんだ!」しかしコロニーが肉眼で見えている時点でカビの被害は意外に進んでいます。ホクシング(シミ)も出ていることが多いでし、胞子も産出し既に飛ばしているかも知れません。さてカビとホコリの区別は実は意外にも簡単です。                 ●ホコリはLEDライトで診ても陰ができにくく形も不規則です。       ○カビはLEDライトで診るとコロニーに陰が出来て概ね円形をしています。小麦粉を落したように見えることもあります。                 ●ホコリは一面に均等に見える場合が多く                   〇カビはコロニーが不規則に点在するような出方をします。また天から背にもカビが確認されるころになると表紙にも被害が及んでいる確率がぐっと高くなります。一方でダニやチャタテ等のムシがカビの被害を拡げたり、一度処理した箇所にカビが再発した場合は少し違う出方をします(次回触れます)。                        

「処理の為の同定」と「保存の為の同定」は違う

meijiclix
7月 29th, 2022

[なぜカビの種まで同定するのか?]

 生物被害が発生した時は焦って「処理」を急ぎますが、実は「再発防止」がとても重要でその為には詳しい同定が求められます。例えば古文書に新しいムシの食害があった場合、点検の後に殺虫処理は概ね ガス燻蒸とクリーニングとなります。しかし、再発防止にはこのムシの更に詳しい情報が必要です。すなわち「フルホンシバンムシ」なのか「ジンサンシバンムシ」なのか「タバコシバンムシ」なのか・・・です。何故ならばムシによって加害対象物や発生時期等々異なるからです。

 もちろんカビも同様です。カビ処理だけであれば属までの同定で十分です。例えばユーロチウム属なのかそれ以外の属か、で概ね決まります。しかし再発防止の為には更に種まで調べて、書庫/収蔵庫がどのような環境にあったのかを正確に把握し適正な再発防止を行う必要があります。ムシと同様にカビにも個性があるのです。

処理の為なら属までで十分ですが保存の為には種までの同定が必要なのです。

コロナ禍とカビ被害(2)

meijiclix
8月 3rd, 2021

 昨年の6月位からコロナ対策として施設の正面ドアや開放できる窓(学芸室や職員室、図書館なら閲覧室)を開けて換気をしておられたと思います。現在も少し開けておられるかもしれません。一般の建物は基本的にやや陰圧気味になるように設定されています。従って外部に通じるドアや窓を開けるだけで外気が少しずつ流入します。もちろん夜間も雨の日も同様です。その結果多くの湿気が建物内に流入することになり、この湿気た重たい空気はやがて地階に集まります。その結果、地階にある図書室等においてカビ被害が発生いたしました。

 空調も運転していましたが残念ながら及びませんでした。むしろ吹き出し口付近の棚では温かく湿った空気と空調からの冷気が触れて湿度が上昇してしまい資料にカビが発生したケースもありました。

 また地階はカビの栄養となるホコリが溜まり易い場所でもあります。カビの胞子や菌糸は単独で浮遊しているだけでなく栄養となるホコリと一緒に浮遊しています。従ってホコリが多いとは「カビの胞子も栄養も多く」、カビ発生のリスクも高いということになります。

 地下は紫外線や熱等の外気の影響を受けにくいものの、一方で湿度が高くなり易くホコリも多く集まり易いのでカビに注意が必要です。ご承知のようにカビは「湿度60%」以下にすることで防ぐことができます。データロガーでの温度湿度測定とこまめな清掃(ホコリ除去)を是非お勧めいたします。

 次回は文化財に発生するカビとその処理についてお話します。

コロナ禍とカビ被害

meijiclix
7月 1st, 2021

 

 私のコラムでは様々な被害や対策の事例をご紹介しなが資料保存のヒントをご提供したいと思っています。さて、コロナ禍で多くの図書館ではカビの被害が急速に増えています。昨年の春、ほとんどの図書館は閉館していました。その後夏にかけて一部では開館しました。その際にコロナ対策として窓を開放するなどして積極的に換気が行われました。その結果湿度の高い空気が図書館内に大量に入り込むことになります。数か月間の閉館による空気の停滞、その後の高湿度の外気流入によりカビが図書に次々に発生したのです。
 ところで一口に“カビ”と言いますが本に生えるカビとお風呂に生えるカビは違う種類です。カビの中でも比較的乾燥に強い種類を「好乾性のカビ」と言い、本や木材に生えるカビがこれにあたります。一方でお風呂などの高湿度の環境下で生えてくる種類を「好湿性のカビ」と言います。クロカビがその代表例です。このようにカビは湿度条件によって発生する種類が異なります。図書に発生する「好乾性のカビ」は湿度65%(あるいは70%)以上から発生します。適温は25℃前後です。この湿度65%・気温25度前後の環境は人間にとっても大変快適です。つまり気づかないうちに、いつの間にかカビが生えていることが多いのです。書庫内には空気の偏りもあることを考慮しなくてはならず、実際の湿度管理は「60%を上限」をお勧めしています。湿度さえコントロールできていればカビは発生しませんし、もちろん防カビ剤等の薬も必要ありません。
 次回からは具体的な事例をご紹介したいと思います。まず図書館の建物の入り口を開放していた為にカビ被害にあった事例です。これが原因で複数の館がカビ被害にあっています。

はじめまして、吉川です。

meijiclix
7月 17th, 2020

弊社のHPを全面リニューアルいたしました。これを機に、お得意先はじめ、美術館、図書館関係者のみなさまに向けてメッセージを発信するページを設けました。よろしくお付き合いください。

このコラムでは2つのテーマでお話ししたいと思います。

先ず一つ目は各施設様の文化財IPMの取り組みをご紹介したいと思います。私たちは「なるべく薬剤を使わないで、手を掛け目を掛けした文化財保存」のお手伝いをしたいと思っています。既に多くの文化財施設で文化財IPMの考え方が取り入れられていますが、特にIPMメンテナンスの重要性をご理解いただき定期的に実施されている施設様が徐々に増えてきていることは大変喜ばしいことだと思います。しかし、一方で収蔵庫自体に問題が無いに関わらず毎年定期燻蒸を継続される施設が今もあります。各施設様の事情等も可能な限りご紹介しながら皆様と一緒に考えていきたいと思います。

もう一つのテーマは図書の生物被害の問題です。

カビやムシによる被害が全国的に拡がっています。特にカビ被害の拡大は年々酷くなっています。カビの理解、処理薬剤の選択、環境整備等、処理・再発の防止には多岐に渡る知識と経験が必要です。また昨今は風水害による水濡れやカビの問題も大きく注目を集めました。これには知識と経験に加えスピードやマンパワー、必要な機材も要求されます。全国の図書館様の事例をご紹介しながらこのテーマも皆様と一緒に考えていきたいと思います。