「処理の為の同定」と「保存の為の同定」は違う
[なぜカビの種まで同定するのか?]
生物被害が発生した時は焦って「処理」を急ぎますが、実は「再発防止」がとても重要でその為には詳しい同定が求められます。例えば古文書に新しいムシの食害があった場合、点検の後に殺虫処理は概ね ガス燻蒸とクリーニングとなります。しかし、再発防止にはこのムシの更に詳しい情報が必要です。すなわち「フルホンシバンムシ」なのか「ジンサンシバンムシ」なのか「タバコシバンムシ」なのか・・・です。何故ならばムシによって加害対象物や発生時期等々異なるからです。
もちろんカビも同様です。カビ処理だけであれば属までの同定で十分です。例えばユーロチウム属なのかそれ以外の属か、で概ね決まります。しかし再発防止の為には更に種まで調べて、書庫/収蔵庫がどのような環境にあったのかを正確に把握し適正な再発防止を行う必要があります。ムシと同様にカビにも個性があるのです。
処理の為なら属までで十分ですが保存の為には種までの同定が必要なのです。
カビの点検 »