コロナ禍とカビ被害
私のコラムでは様々な被害や対策の事例をご紹介しなが資料保存のヒントをご提供したいと思っています。さて、コロナ禍で多くの図書館ではカビの被害が急速に増えています。昨年の春、ほとんどの図書館は閉館していました。その後夏にかけて一部では開館しました。その際にコロナ対策として窓を開放するなどして積極的に換気が行われました。その結果湿度の高い空気が図書館内に大量に入り込むことになります。数か月間の閉館による空気の停滞、その後の高湿度の外気流入によりカビが図書に次々に発生したのです。
ところで一口に“カビ”と言いますが本に生えるカビとお風呂に生えるカビは違う種類です。カビの中でも比較的乾燥に強い種類を「好乾性のカビ」と言い、本や木材に生えるカビがこれにあたります。一方でお風呂などの高湿度の環境下で生えてくる種類を「好湿性のカビ」と言います。クロカビがその代表例です。このようにカビは湿度条件によって発生する種類が異なります。図書に発生する「好乾性のカビ」は湿度65%(あるいは70%)以上から発生します。適温は25℃前後です。この湿度65%・気温25度前後の環境は人間にとっても大変快適です。つまり気づかないうちに、いつの間にかカビが生えていることが多いのです。書庫内には空気の偏りもあることを考慮しなくてはならず、実際の湿度管理は「60%を上限」をお勧めしています。湿度さえコントロールできていればカビは発生しませんし、もちろん防カビ剤等の薬も必要ありません。
次回からは具体的な事例をご紹介したいと思います。まず図書館の建物の入り口を開放していた為にカビ被害にあった事例です。これが原因で複数の館がカビ被害にあっています。