現在、美術館、博物館、図書館等、どの施設でもムシやカビの処理に少なくないコストをかけていらっしゃると思います。とくに、燻蒸処理にかかる費用は大きく、全館燻蒸となれば数百万規模になると思われます。
なぜ毎年、多くのコストが必要になるのかといえば、害虫やカビが発生する環境が改善されずにそのままになっているからです。
毎年同じことの繰り返しになるのは必然です。
そしてなぜ改善できないのかというと、被害の実態が誰にも把握できていないのが原因です。
きめ細かい対策を重ねることで文化財を守るコストは下がっていきます。
濃度の高いガスで燻蒸処理を行えば、ほぼ確実にムシ・カビは一掃できます。
状況によっては最も有効な手段です。
ただ、はたしてそれほど強力な処理が必要なのか?というのが文化財IPMの入り口です。
被害の原因はムシなのか、カビなどの菌なのか、ムシだとしたらどんな種類の虫なのか、それがわかれば燻蒸に使用するガスの濃度を下げることもできます。
いや、燻蒸以外の対策で低コストで被害を抑えられる可能性が高いでしょう。
つねに警戒が必要な場所、それほどでもない場所に分けることも大切です。
毎年燻蒸処理をされていた施設なら、文化財IPMを導入したとしても初年度から燻蒸処理をゼロにすることは難しいと思われます。
しかし、少しずつ環境を改善し、ムシやカビに対してきめ細かい対応をしていくことで、燻蒸が半分になり、1/3になった結果、文化財保存のコストは大きく下がるでしょう。